必ず受かる情報処理技術者試験

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令和5年度秋季解答

問題16

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルブロセス)によれば,ソフトウェアシステムのライフサイクルで実行するプロセスグループの説明のうち,テクニカルプロセスの説明はどれか。

取得者及び供給者の双方が、それらの組織のために価値を実現し,ビジネス戦略を支援することを可能にする。
組織の管理者によって割り当てられた資源及び資産を管理すること,並びにーつ以上の組織が行った合意を果たすために資源及び資産を適用することに関係する。
プロジェクトが組織の利害関係者のニーズ及び期待を満たすことができるように,必要な資源を提供することに関係する。
利害関係者のニーズを製品又はサービスに変換し,その製品を適用するか,又はそのサービスを運用することによって,利害関係者要件を満たし,顧客満足を獲得できるようにする。

解答:エ

<解説>

ソフトウェアライフサイクルにおけるプロセス群(JIS X 0160:2021)は次の4つのプロセスに分類される。

合意プロセス
契約や合意に関する活動を扱う。
例:取得プロセス、供給プロセス。
組織のプロジェクトイネーブリングプロセス
組織レベルでプロジェクトを円滑に遂行できるように環境や仕組みを整備する。
例:ライフサイクルモデル管理、人材管理、インフラ管理、品質マネジメント。
テクニカルマネジメントプロセス
プロジェクトマネジメントに相当する領域で、技術活動をマネジメントする。
例:プロジェクト計画、プロジェクト評価、リスク管理、構成管理。
テクニカルプロセス
利害関係者の要求を製品やサービスに具現化するための技術的活動。
例:要求定義、設計、実装、結合、検証、妥当性確認、運用、保守。
× 合意プロセスに関する説明である。合意プロセスは、契約や調達活動を通じて組織の価値を実現し、ビジネス戦略の達成を支援する役割を担う。
× テクニカルマネジメントプロセスに関する説明である。プロジェクト計画やリスク管理、資源の管理など、技術活動を遂行するためのマネジメント活動を担う。テクニカルプロセスとは区別される。
× 組織のプロジェクトイネーブリングプロセスに関する説明である。組織全体の立場からプロジェクトを支援し、必要な資源・インフラ・体制を整える役割を持つ。したがってテクニカルプロセスではない。
テクニカルプロセスの説明である。要求分析、設計、実装、検証、妥当性確認、運用、保守など、製品やサービスを通じて顧客の要求を満たす活動を含む。

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問題17

組込み機器用のソフトウェアを開発委託する契約書に開発成果物の著作権の帰属先が記載されていない場合,委託元であるソフトウェア発注者に発生するおそれがある問題はどれか。ここで,当該ソフトウェアの開発は委託先が全て行うものとする。

開発成果物を,委託元で開発する別のソフトウェアに適用できなくなる。
当該ソフトウェアのソースコードを公開することが義務忖けられる。
当該ソフトウェアを他社に販売する場合,バイナリ形式では販売できるが,ソースコードは販売できなくなる。
当該ソフトウェアを組み込んだ機器のハードウェア部分の特許を取得できなくなる。

解答:ア

<解説>

契約書に著作権の帰属を明記していないことは、委託元にとって重大な法的・事業的リスクを伴うため、ソフトウェア開発の契約では、著作権の取扱いを明記し、必要に応じて著作権譲渡や使用許諾の条件を明示することが不可欠である。

開発委託によってソフトウェアを開発した場合,特に取決めをしなければ,作成されたソフトウェアの著作権は委託先に帰属する。この場合,委託元が委託先の許可を得ずにそのソフトウェア成果物を他のソフトウェアに適用することはできない。

よって,開発委託の契約書に開発成果物の著作権の帰属先が記載されていない場合,開発成果物を,委託元で開発する別のソフトウェアに適用できなくなる。正解は、アである。

著作権の帰属が委託先にある場合、発注者は契約で明示された範囲(例:特定の機器に組み込むなど)でしか成果物を使用できない。別のソフトウェアに転用するには委託先の許諾が必要となり、自由に利用できないという問題が発生する。
× ソースコード公開が義務付けられるのはオープンソースライセンス(例:GPL等)を採用した場合であり、契約書に著作権の帰属先が記載されていないこととは直接関係がない。
× 著作権が委託先に帰属する場合、発注者はそもそも販売の権利自体を持たないため、バイナリ形式であっても自由に販売できない。形式によって販売可否が変わることはない。
× ソフトウェアの著作権帰属の問題と、ハードウェア部分の特許取得の可否は直接の関係がない。特許は発明の技術的特徴に基づいて判断されるため、この選択肢は適切ではない。

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問題18

新システムの開発を計画している。提案された 4 案の中で,TCO(総所有費用)が最小のものはどれか。ここで,このシステムは開発後,3年間使用するものとする。

A案
B案
C案
D案

解答:ウ

<解説>

TCO (Total Cost of Ownership)とは、コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額のことである。

ハードウェア導入費用,システム開発費用,導入教育費用は、初期費用である。

ネットワーク通信費用/年,保守費用/年,システム運用費用/年は、恒常的な費用である。

それを踏まえてTCOを計算すると、次のようになる。

    初期費用   恒常的な費用    
A案 30+30+5 + (20+6+6) ×3 =161百万円
B案 30+50+5 + (20+5+4) ×3 =172百万円
C案 40+30+5 + (15+5+6) ×3 =153百万円
D案 40+40+5 + (15+5+4) ×3 =157百万円

したがって、C案のTCOが最小となる。したがってウが正解である。

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問題19

JIS Q 20000-1:2020(サービスマネジメントシステム要求事項)を適用している組織において,サービスマネジメントシステム(SMS)が次の要求事項に適合している状況にあるか否かに関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で組織が実施するものはどれか。 [要求事項〕 ·SMS に関して,組織自体が規定した要求事項 ·JIS Q 20000-1:2020 の要求事項

監視,測定,分析及び評価
サービスの報告
内部監査
マネジメントレビュー

解答:ウ

<解説>

JIS Q 20000-1:2020(ISO/IEC 20000-1:2018に対応)では、サービスマネジメントシステム(SMS)の有効性と適合性を確認するために、内部監査(internal audit) の実施が求められている。 内部監査は、組織自身が定めたSMSに関する要求事項および規格要求事項への適合性を、あらかじめ定めた間隔で体系的に点検する活動である。

したがって、選択肢ウが正しい。

なお、JIS Q 20000-1:2020では次のように定められている。

9.2 内部監査
9.2.1 組織は,SMSが次の状況にあるか否かに関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなければならない。
a)次の事項に適合している。
1)SMS に関して,組織自体が規定した要求事項
2)この規格の要求事項
b)効果的に実施され,維持されている

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問題20

要件定義プロセスにおいて,要件を評価する際には,矛盾している要件,検証できない要件などを識別することが求められている。次のうち,要件が検証可能である例はどれか。

個々の要件に,対応必須,対応すべき,できれば対応,対応不要といったように重要性のランク付けがなされている。
システムのライフサイクルの全期間を通して,システムに正当な利害関係をもつ個々の利害関係者が識別できている。
システムやソフトウェアが,要件定義書の記述内容を満たすか否かをチェックするための方法があり,チェック作業が妥当な費用内で行える。
実現可能か否かにはこだわらず,全ての利害関係者のニーズ及び期待が漏れなく要件定義書に盛り込まれている。

解答:ウ

<解説>

要件定義における「検証可能な要件」とは、要件が満たされているかどうかを、客観的な方法(テスト、測定、解析、レビュー、デモンストレーションなど)によって確認できる特性 のことである。

選択肢ウは「要件をチェックする方法があり、妥当な費用で確認可能である」と述べており、これは検証可能性の定義に合致している。したがって正解はウである。

× これは要件の「優先度付け」に関する記述である。優先度を明確にすることは要件管理上重要であるが、検証可能性とは直接関係がない。したがって誤りである。
× これは「利害関係者の特定」に関する活動の記述である。要件定義の初期段階で必要な作業ではあるが、要件が検証可能か否かを示すものではない。したがって誤りである。
要件が検証可能であるとは、「測定・観察・テスト・レビューによって、満たされているかどうかを客観的に判断できる」という意味である。選択肢ウはまさにその定義を説明しているため、正解である。
× 「完全性(網羅性)」に関する記述である。確かに利害関係者のニーズを反映することは重要であるが、実現可能性や検証可能性を無視して要件を盛り込むと、不適切な要件となる。

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